- 山崎豊子 『沈まぬ太陽』
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2007.06.18 Monday大学を出て就職し、結婚して家族もできて、家をもち、子どもが学校にはいって…という自分と同世代の働き盛りの人が単身赴任していく、ということが近所で、立て続きにありました。今から7年ほど前の話です。家族で夕食をかこんだとき、「ああ、家族で夕飯をいっしょに食べれるのって幸せや。でも、そうできん人がおる。自分ももっとがんばらないかん。そういう年齢なんや。」としゃべったことを覚えています。
若いころは、「自分が若いでやらないかんわな」と思い、40歳こえたら、「若い人よりちゃんと給料大目にもらっているで、自分か若いのか、どっちがやるのか、っていうたら、自分が責任の大きいほうをとらないかんわな」と思い込んでいました。そうして、自分が勤めている学校に組合の執行委員の話が回ってきました。41歳の冬でした。
何度か職場会を開きましたが、全体の場の話し合いではなかなか決まらず、候補者の名前を何人かあげ、投票の前に、まずその候補者が話し合いをする、とういうことになりました。自分もその候補者に入っていました。「自分はここにきて、2年目で、そういう自分にやらせるのか」とか、「今、自分の子どもが小さいし、共稼ぎで精一杯で・・・」という話が出たのを覚えています。聞きながら「この中なら自分やな」と思い、「自分がやるわ」とまだこの後におよんで決心していないのに口が勝手に動くみたいにそう言いました。
毎日のように組合の活動がありました。今からそのころのことをいろいろ思いかえすと、自分にはその素養がなかったのか、仕事の量以上に精神的に苦しんでいたようです。体で言えば、朝起きても疲れがとれず毎朝QPコーワゴールドをのんだり、肩こりに悩み、2年たって、執行委員の退任のあいさつでこう書きました。
「やっぱりこの仕事は、あの信任票がずっしり肩にのしかかってくる。自分のメッキがはがれる前に退任になって、正直なところホっとしている。」
あのころの写真をみると、このころからかなあと思います。任期は2年と決まってはいないのに、来年は自分をはずしてほしい、と言ったこともあります。今から思えば、ほかのメンバーの気持ちを考える余裕もありませんでした。執行委員を2年したあと、新しい職場で3年生の担任になり、9月に不眠からうつになりました。
宮部みゆきさんのあと、山崎豊子さんの小説をいくつか読みました。はじめは、ドラマ「白い巨塔」を見ていて、その小説を読んだのがはじめです。「白い巨塔」はドラマもよかったですが、原作もどきどきしながら読めました。読んだあとの余韻というか、あの虚脱感がたまりません。しばらくそっとしたあと、「女系家族」と「仮想集団」と「沈まぬ太陽」と読みました。
「仮想集団」と「沈まぬ太陽」は組合活動がテーマになっています。自分のおすすめは、日本航空の労使関係、1985年の御巣高山でおこった日航機墜落事故をとりあげた「沈まぬ太陽」です。その主人公の生き様はすさまじく、かなり、打ちのめしてくれます。数ヶ月前なら、途中で耐えられなくなって、読むのを止めていたと思います。だんだん厳しい内容のものにも耐えられるようになりました。復職する前に、昔の自分のように「それでもがんばろまい」とこの本を読めるようになってよかったと思います。
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)
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- NHKスペシャル 『映像の世紀 第9集』
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2007.06.26 Tuesday昨夜、次女が「プロポーズ大作戦」の最終回を見るので、自分は北のおこもり部屋にひきあげてふとんにはいって、NHKのニュースを流しながら、山崎豊子さんの「不毛地帯」を読んでいました。すると、「うつ」という言葉が耳に入り、テレビを見るといつのまにか、番組が変わってNHKスペシャルになっていました。スタンドを消して見ました。見ていて、情報は大事だな、ということと、雇用者次第だ、ということを感じました。
先日、家内がある本を買ってきました。『うつを生きる 朝日新聞医療グループ 編』。ずっと立ち読みをしていて、すでに彼女は読み終わったそうですが、自分に読ませたいと買ってきたそうです。自分は、うつの本は、前にも紹介した『「家族力」がうつから救う!』と『ツレがうつになりまして。』で満足というか、落ち着いていましたので、
「いくらしたん?1000円?もったいないなあ。」
というつれない返事をかえしてしまいました。家内も1000円は大金で迷って買って、そのうえ、自分にこう言われては後悔も倍増するので言い返しました。
「あの赤い本(『「家族力」がうつから救う!』)をもっとはやく読んでいたら、こんなこと(2度目の病気休暇・病気休職)にならんだと思うよ。だから買ってきたん。」
ポイントの高い実弾でした。
確かに『「家族力」がうつから救う!』の第1版発行は2006年3月31日ですから、1度目の病気休職、復職時にはまだ出てなかったわけで、もし、読んでいたら、もっと、対処法や心構えはぜんぜん違ったものになり、結果も変わっていたはずです。このとき、この本のありがたみ、うつ患者にとって情報がいかに大切かがわかりました。ちなみに、昨日の午後、月1の学校長と面談しましたが、学校長からは、「3度目はないので、慎重に復職させたい」と言ってもらっています。
さて、「30代の働き盛りの会社員にうつ症状の人が急増している」と指摘するNHKの番組の話にもどります。原因はこうです。(再放送を録画して確認してから書き込みますが思い出すとこんな感じだったと思います)
1.業務の効率化のいきすぎ
2.バブル崩壊後の新規雇用縮小による従業員のいびつな年齢構成
3.成果主義のいきすぎ、リストラ
公立学校の教員にリストラがないのは大きいとは思いますが、今の教育現場も同じかむしろそれ以上に厳しい環境で、やっていたように思います。番組の最期に、経済的に苦しくなって、うつの症状を引きずりながら、新しい職場に出勤する男の人を見ていて苦しくなってきました。
前途に困難な日々が待っています
でももうどうでもよいのです
私は山の頂上に登ってきたのだから
私も長生きがしたい
長生きするのも悪くないが今の私にはどうでもいい
神の意思を実現したいだけです
神は私が山に登るのを許され
私は頂上から約束の地を見たのです
私は皆さんといっしょにと行けないかもしれませんが
一つの民として私たちはきっと約束の地に到達するでしょう
今夜、私は幸せです 心配も恐れも何もない
神の再臨の栄光をこの目で見たのですから
「NHK 映像の世紀」の第9集に収録されているキング牧師の演説です。暗殺される前日ものですが、暗殺を予期していたような演説です。昨日の夜、なぜか急に見たくなって、リビングの書庫で探しました。

NHKスペシャル 映像の世紀 第9集 ベトナムの衝撃
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- マイケル・チミノ監督の映画 『ディア・ハンター』
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2007.07.21 Saturdayサッカーアジア杯の中継をみていました。ハノイのサッカー会場が大写しになったとき、スタンドの屋根に大きな白黒の写真がはってありました。「ホーチミンやろなあ」と思いましたが、そのときは、この3連休に起きた、台風と地震が気になっていたので、あんな大きな写真の看板が落ちないのか心配していました。
学生時代、友達の下宿に、マイケル・チミノ監督の映画「ディア・ハンター」のパンフレットがありました。この映画の有名なロシアン・ルーレットのシーンにも、マイク(ロバート・デ・ニーロ)の後ろにホーチミンの写真が飾ってありました。昔は、主人公のマイクの気持ちで、あんな状態でも、仲間と生き延びようとする人間的な強さにあこがれてこの映画をみていました。でも、今はむしろ、ニック(クリストファー・ウォーケン)が自分の頭に銃口をむけて引き金を撃ったあと、自分の中の何かがボロボロに壊れていった表情に自分にはジーンときます。癒されるわけではないのですが、自分にはいろいろなことを思い浮かべさせるシーンです。
その後、ニックはサイゴンの病院で名前がロシア系だということで身元調査を受けます。そのとき、今までかばっていた部分がはがされて、嗚咽します。ここまで、自分には理解できるのですが、なぜ、婚約者(メリル・ストリープ)のいるアメリカの故郷に帰らず、サイゴンの街をさまよい、よりによって、今度は、自分からロシアン・ルーレットの賭博場に乗り込んで、「こうやって撃つんだ」とでもいいたげに、わざわざ銃をとりあげ、自分のこめかみに撃てるのか、わかりません。それに、なぜ、そこにマイクまでいるのか…?
アメリカに帰還していたマイクが、ニックを捜すために、再びベトナムに戻り、賭博場で彼を見つけ出します。しかし、ニックの記憶は取り戻せません。自分の命を賭けて、ニックを連れ戻そうと賭けの相手として参加し、自分の頭に銃口を向け撃つときのマイクの悲痛な表情は何ともいえません。
最期にギターのメロディが心にしみじみ沁みてきます。名曲だと思います。

ディア・ハンター
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- 高杉良 『金融腐食列島』
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2007.10.18 Thursday高杉良さんの『金融腐食列島』は、経済オンチの自分でも読みやすかった小説でした。
話はバブル崩壊後の金融業界が舞台です。バブル期に地上げと解体屋、産業廃棄物処理業者の分野で、不動産屋も土建屋もヤクザと深く関わることとなり、不動産屋と土建屋の背後にいる銀行と証券会社も間接的、直接的にヤクザに汚染され、そのヤクザの介入を抑えるために警察ではなく、結局ヤクザに助けを求め、借りをつくってしまう現状が作られます。
大手都銀・協立銀行虎ノ門支店副支店長の竹中治夫は、会長のスキャンダルのもみ消しのために、トップから一本釣りで本社総務部への異動を命じられ、総会屋対策を担当することになって、直接、特殊株主、総会屋、ヤクザと面を合わせ交渉し、不正融資にも関わることになってしまいます。それが負い目となって、竹中は苦しむのですが、その苦しみ方に共感します。
会長のスキャンダルの揉み消しに関わった元大物総会屋の児玉から、お年玉やと100万円の入った角封筒を渡されたとき、
「おまえ、わしに恥をかかせる気か。一度出したものを元へ戻せると思ってるのか」
と激怒する児玉に、結局、
「竹中も頑固だなあ。わしにここまで抵抗できるとは見上げたやつだ。ま、おまえの立場に与するとするか。釈然とせんが、わしの負けだ。」
と言わせた10数秒やりとりが痛快です。そのあと児玉は竹中のよき理解者となり、裏の世界の仲介者、大きな後ろ盾になっていくのは仕方のないことかもしれません。それにしても児玉のキャラは人間味があって笑えます。小説の中で、竹中と児玉の会話は結構癒してくれます。
株主総会を終えたあと、今度はもっと過酷な不良債権の処理を担当する部署にまわされ、そこに右翼や広域暴力団関州連合が介入し、中傷のビラや街宣車攻撃にさらされ、家族も心身症になり…。なんとか、児玉に仲介に入ってもらい、協立銀行と関州連合との手打ち式に持ち込む手はずを整えるのですが、その際トップにも食ってかかるほどの竹中への、上司の永井の心配りもいいなあと思います。
高杉さんがこの小説を書くにあたって、今の日本の金融業界は「ヒーロー不在」だということが悩みの種だったということですが、竹中が3年半の苦闘の中でどんどんタフになっていく、という点で現場であがいていた自分にとっては充分ヒーローに映ります。確かに本当に闘った、とか、大きな仕事をした、とか、何かをやり遂げる、ということには無縁の金融業界ですが、それは教育現場も同じです。そして、もちろん保護者の中にもいろいろな方がみえます。銀行の仕事も、部署によっては神経がタフでないとやってけないんだなあと読んでいましたが、そういえば、近所で金融業界の方が体調を崩した話もありました。

金融腐蝕列島 (上) (角川文庫)
- 宮部みゆき 『火車』
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2007.10.22 Monday宮部みゆきさんの『火車』
バブルがはじけた直後の1992年が初版ですから、当時よりも世相もさらに厳しくなっていますが、自己破産に関わる推理小説です。
自己破産して奈落に落ちていく「火車」のような多重債権者をぎりぎりのところで止めようとする弁護士が、自己破産の行方不明者を追う刑事本間俊介に話す中味は興味深いです。
手取り20万の20代のサラリーマンがなぜ3000万の借金をしたのか、誰がそこまで貸したか、どうして借りることができたか…。
この方法だとお金がもうかる、とか、株だ、マンションだ、ゴルフ会員権だ、どこどこの旅行が面白い、この町が格好いい、お洒落だ、着るものはこうだ、車はこうだ、などという情報を追いかけずにはいられない世間一般人の気持ちに、法規制、縦割り行政、教育の課題が追いつけないまま、消費者信用や銀行の無担保融資がつけこみます。
まず「割引」とか「優待」という言葉に魅かれて、クレジットカードを勧められるままに作ります。そのうち銀行系のカードだと、まるで自分の銀行口座から自分のお金を引き出すようにお金をCD機で借りることができることを知ります。そして、偶然の操作ミスか何かのきっかけで「なんだ、キャッシングって簡単なんだな」とその手軽さに気づき、サラ金にいくのはカッコ悪いけどキャッシングにいくのはスマートな感じがする、と、キャッシング機の前に立ちます。
いちいち金利の説明はしてくれないキャシング機から、例えば、10万借りて1ヶ月で3000円ちょっとの利子ということで、利子もそれほど高いとは感じなかったらもうアウトです。実はその金利はサラ金とどっこいどっこいなのに、少しずつの利用だから浪費しているという感覚がないまま、ショッピングとキャッシングも繰り返していきます。そうやって負債は膨らみ、仮に給料の手取りが15万だと、支払い額が4、5万になったころに生活が苦しいと気づきます。
A社の支払いのためにB社のカードでキャッシングし、やがてキャッシングだけではどうにもならなくなり、サラ金でも同じパターンを繰り返します。サラ金によっては、自社の支払いのために他の会社(もっとランクの低い、資金力の少ない、審査の甘い、経営が苦しい、無制限に貸してくれる会社)を紹介し、多重債権者は貸してくれるところならどこへでも行く状態に陥ります。毎日の取立てに怯え、警察も「民事不介入」と言って話にはいってくれません。
多重債権者の行き着く最悪の場所のひとつが客に新しくクレジットカードを作らせ、家電製品や新幹線のチケットなどを買わせ、七掛けぐらいで買い取り、それを支払いに充当するという『買取屋』です。
一度はまりこむと、容易に逃げ出すことができない構造で、「破産」という言葉のもつ烙印のようなくらいイメージに怯えて、どうしてこんなことになったのかわからないと呟きながら、自己破産せず、家を捨て、職場を追われ、故郷を離れて、自殺したり、一家心中をしたり、夜逃げしたり、犯罪に走って他者を巻き込む悲劇を起こすところまで追い込まれていきます。
15年前よりもこの国は、ますます壮絶な自転車操業にも磨きがかかり、最期にババをひくのが自分でなければいい、ツケは下へ下へと回されていくものだ、人生いろいろと大きな顔で公言されてしまい、借金まみれの人は自己責任とか自助努力がまだまだ足りないとまで言われて…。時々公務員の不祥事にサラ金問題がからんでいることが報道されますが、そういうことだったのかと納得しました。今は多重債務者問題の解決に法整備がいくらか進んで、例えば金融庁が、法テラスなどで、相談を受け付けているそうです。
小説の最後のほうで赤福の本店が舞台になったときは、今更に奇妙な感じです。

火車 (新潮文庫)
- 宮部みゆき 『R.P.G.』
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2007.11.30 Fridayどうも眼が気になって、眼科を3件まわり、眼球には異常はない、緑内障ではない、原因はデプロメールでもリーゼでもハルシオンでもない、ただ視神経を調べたいと、脳のMRIを撮ることになって、待合室に持ち込んだ宮部みゆきさんの初期の短編が何か物足らなくなって、あまり期待してなかったけど、家に帰ってから読んでやっぱりよかった宮部みゆきさんの『R.P.G.』。
『模倣犯』に出てきた武上悦郎刑事を中心とした捜査班と、『クロスファイア』(まだ読んでいないのですが)で左遷された石津ちか子刑事が、2つの殺人事件を巡って再会する、という設定で、そこに登場する4人の人間の生きかたがいろいろなことを教えてくれます。
自分もふくめて、誰もがなりふりかまわず本当の自分をさがしている時世に、自分探しをするまでもなく、すでに自分を持っていると自負し、それをまっとうするために手段を選ばず、まわりの者の心情を省みることもなく、自分の意思を通すためならばどんなことさえもやりかねない、誰であろうとわたしを裏切り傷つけるものは断じて許さない、という犯人のいう「正義」。ウォーキング中に家内から出てくる長女の学年の話題にも、自分が受け持ったクラスにもそんな子がいたなあといろいろ思い起こさせた犯人。
自分より先に自供してしまえば、「わたしをチクッた」と、その共犯者さえも殺してしまいそうな犯人を「罠にハメるなら、共犯者2人同時でなきゃ危ない」と、事件の解決をはかる中本房夫巡査部長の執念。
中本房夫巡査部長が心筋梗塞で倒れたあと、その代役となり演じきる武上悦郎刑事の人柄。
被害者の遺族で犯人の母親でもある女性を警護しながら、もし彼女を助けられなくてもそういう自分に耐え抜かなければいけないと思う石津ちか子刑事がいう忍耐力。
復職プログラム開始の3日前にして、人間描写がリアルすぎる宮部みゆきさんの小説を読んでいるのはあまり良くないのかもしれない、と思いながら、結局、両目が充血してしまいました。
R.P.G. (集英社文庫)
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